Thursday, September 24, 2009

読売新聞9月24日ピカソ祭で「十選」

ハンガリー出身千曲在住の陶芸家

ピカソ祭で「十選」

リボンのように伸ばした粘土を、らせん状に巻き付けたり張り合わせたりして、焼き上げた急須や器――。ハンガリー出身で千曲市在住の現代陶芸家アーグネス・フスさん(48)の作る巻き貝やメビウスの輪を思わせるような作品が注目されている。7月にフランス・バロリスで行われたピカソ祭のコンクールでは「十選」に選ばれた。

アーグネスさんは、ハンガリー南部、ドナウ川が街の中心を流れる都市モハチで生まれた。教師に絵の才能を認められ、美術高校に進んだ。

当初は彫刻家を目指していたが、銃弾を撃ち込んだ粘土をそのまま焼き上げるような陶芸家たちの前衛的な作品に刺激を受けた。「彫刻よりも、陶芸の方が現代美術としてずっと先を行っている」と感じ、国立ハンガリー美術工芸大で陶芸を学んだ。直線と曲線を組み合わせて近代ビルのように仕上げた作品など大胆な造形が好きで、磁器工場では「こんな形にしないで」と注意されることもあったという。

1990年に修士課程を修了した頃、ハンガリーで創作活動をしていた銅版画家の若林文夫さん(66)と知り合った。92年に来日し、若林さんと結婚。若林さんの自宅がある千曲市上山田温泉にアトリエを構えた。

日本の家庭料理やお茶に触れ、急須や茶わん、湯飲みやとっくりなど、日々の生活に使う器を創作するようになり、特徴的ならせんや渦巻きを、日本の器にも取り入れた。「求心力と遠心力、束縛と解放を同時に感じる不思議な形。どうしてもこの形にしてしまうんです」と笑う。

ピカソ祭に出品した作品は、青く彩色した粘土をリボン状にした上で巻き上げた磁器製オブジェ。ピカソの作品に描かれた人物の手をモチーフに焼き上げ、タイトルも「Fingers」(指)とした。

「ピカソは陶芸もしていたんですよ。器の中に、使いやすさと同時にデザインも取り入れたいし、オブジェの制作も続けていきたいと思っています」と、アーグネスさんは話す。

(2009年9月24日  読売新聞)田中 洋一郎

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